はじめに
最近、円安で物価が高騰というようなニュースをよく耳にする。
「円安になると輸出が増えるが輸入が減り、円高になるとその逆が起こる。」
このくらいの理解を持っている人は多いのではないかと思うが、実際円高・円安というのが何を意味するのかをきちんと理解している人は案外少ないのではと思う。
そこでこの記事では、円安・円高をより身近で分かりやすいものを例にしながら解説する。
通貨の価値とは?
まず円高・円安という言葉の意味は、円という通貨の価値が他の通貨と比べて高いのか低いのかということである。
つまり「円高ドル安」になったと言えば、円の価値がドルの価値よりも相対的に高くなったということを意味する。
それでは、ここでの「通貨の価値」とは何なのだろうか?
円高・円安の意味を理解するにはまずこの点を理解する必要がある。この点について次のセクションで解説する。
通貨とは他人を働かせる権利
通貨の価値を理解するうえでは、まず通貨というものを以下のように理解するべきである。
通貨とは、「その通貨を欲しがる人を働かせることのできる権利」である。
つまり円という通貨は、円を欲しがる人を働かせることのできる権利なのである。この権利があれば円が欲しい美容師から髪を切ってもらえたり、円が欲しい農家からお米をもらえたりするわけである。
これと同じ原理がドルでも当てはまるわけである。ドルを持っていると、ドルを欲しがる人に働いてもらうことができる。
そしてこれらの権利の価値のバランス関係が、円安・円高といった現象に直結していくのだ。次のセクションで例を交えて解説する。
働かせる権利の価値のバランスが通貨レートになる
前段で議論したように、「円を欲しがる人を働かせることのできる権利」と「ドルを欲しがる人を働かせることのできる権利」のバランス関係を反映したのが、円ドルレートである。
より分かりやすく考えるために、仮に日本はお米を、アメリカは小麦を生産するだけで他の事業は一切行っていない国になったと仮定しよう。そしてこの2国間でお米と小麦の貿易を行う。
いま1ドル=100円だった場合、日本人は100円を1ドルに替えて1ドル分の小麦を、アメリカ人は1ドルを100円に替えて100円分のお米を手に入れる。ここでの両替のプロセスは、アメリカ産の小麦を買うためにドルが欲しい日本人と、日本産のお米を買うために円が欲しいアメリカ人との間で行われる。
ある時、アメリカで空前のお米ブームがやってくる。
アメリカ人は日本でしか生産されていないお米をとにかく欲しがる。
そうすると小麦を手に入れるために円をドルに替えたい日本人の数は今までと変わらないのに、お米を手に入れるためにドルを円に替えたいアメリカ人の数が急増する。
そうすると両替の際の需給のバランスが崩れ、今までよりも多くのドルを支払わないと円を手に入れることができなくなる。こうすると相対的に円の価値が上がるのだ。
例えば100円を得るために従来の1ドルではなく、2ドル支払うような人が出てくると、1ドル=100円から1ドル=50円になり円高となるのだ。
つまりこれは「円を欲しがる人(=日本人)を働かせることのできる権利」が「ドルを欲しがる人(=アメリカ人)を働かせることのできる権利」と比較して価値が上がった結果であり、それが円高につながっているのである。
当然これはかなり単純化した例だが、本質的にはこれが通貨のレートが決まるメカニズムである。
まとめ
まとめると、ポイントは以下のとおりである。
・通貨とは、他人を働かせることのできる権利である
・為替レートというのは、複数の通貨の価値のバランスによって決定する
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